労働組合の資格審査とは?資格要件や審査の流れを解説!

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労働組合の資格審査とは、労働組合が不労労働行為の救済を申し立てたり、都道府県労働委員会の労働者委員を推薦したりするとき、労働組合法で定める要件を満たしているか精査する審査のことです。
本記事では、労働組合の資格審査が必要となる場合や労働組合の資格要件について解説します。労働組合の資格審査の流れについても開設するため、ぜひ参考にしてください。
労働組合の資格審査とは
労働組合の資格審査とは、労働組合が労働組合法の規定する一定の要件に適合するか否かを審査することです。都道府県に置かれる労働委員会によって実施されます。
労働組合は自由に設立できるため、設立したこと自体を会社や官公署に届け出る必要はありません。許可も不要です。しかし、労働組合法上の手続きを利用したり、使用者による不当労働行為に救済を申し立てたりするためには、資格審査をクリアする必要があります。
労働組合の資格審査が必要となる場合
労働組合の資格審査が必要となる場合は、次のとおりです。
- 不当労働行為の救済を申し立てるとき
- 労働委員会の労働者委員の候補者を推薦しようとするとき
- 組合の名前で財産を所有したり、取引したりするために法人登記をしようとするとき
- 労働協約の地域的拡張適用の申請をしようとするとき
- 職業安定法で定められている無料の職業紹介事業または労働者供給事業の許可申請をするために、証明書が必要なとき(職業安定法第33条、45条)
このうち、労働協約の地域的拡張適用については、労働組合法第18条に定められている制度です。同条によれば、ある地域で働く同種の労働者と使用者は、厚生労働大臣または都道府県知事の決定に基づき、一つの労働協約の適用を受けられます。
労働組合の資格要件
労働組合の資格要件は、大別すると次の2つに分けられます。
- 自主性の要件(労働組合法第2条)
- 民主性の要件(労働組合法第5条第2項)
労働組合法に記載される内容をもとに、各要件を説明するため、ぜひ参考にしてください。
自主性の要件(労働組合法第2条)
労働組合は労働者が主体となって自主的に組織されていなければなりません。そのため、労働組合法第2条に規定される次の要件を満たさなければなりません。
- 労働者が主体となって、自主的に組織していること
- 労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的としていること
- 使用者の利益を代表する者が参加していないこと
- 使用者から労働組合の運営のために経理上の援助を受けていないこと
- 共済事業や福利事業のみを目的としていないこと
- 政治運動や社会運動を主目的としていないこと
つまり、自主性の要件を満たすうえでは、使用者の利益を代表する人が加わっていたり、使用者から経費の援助を受けていたりすることが重要です。
民主性の要件(労働組合法第5条第2項)
民主性の要件を満たすためには、次の事項が労働組合の組合規約に定められていなければなりません。
- 名称
- 主たる事務所の所在地
- 組合員の平等権・均等取扱い
- 組合員の資格の保護(人種・宗教・性別・門地・身分による差別をしないこと)
- 役員の選出方法(組合員又は代議員の直接無記名投票により選出されること)
- 総会の開催回数(少なくとも毎年1回)
- 会計監査・報告(公認会計士などによる監査証明をつけて少なくとも毎年1回組合員に公表すること)
- 同盟罷業の決定(組合員又は代議員の直接無記名投票により過半数が賛成すること)
- 規約の改正(組合員又は代議員の直接無記名投票により過半数が賛成すること)
労働組合の資格審査の流れ
労働組合の資格審査の流れは次のとおりです。
- 申請(申請書・立証資料):資格審査申請書および立証資料(組合規約、役員名簿、会計書類、労働協約、経費援助を受けていない旨の使用者の証明書など)を労働委員会に提出します。
- 調査:労働組合が自主的な組合であるか、民主的な組合としての規約を備えているかなどについて提出資料をもとに調べられます。
- 公益委員会議:労働組合が労働組合法の規定に適合するか決定します。不適用な部分がある場合、労働委員会は、不適合な部分を改めるよう労働組合に勧告し、改められれば適格である旨を決定します。
- 交付:労働委員会が資格決定書の写しまたは資格証明書を労働組合に対して交付します。
提出書類
労働組合の資格審査では、次の書類を提出する必要があります。
- 労働組合資格審査申請書
- 組合規約及び付属規程(議事運営規程・選挙規定など)
- 組合役員名簿
- 非組合員の範囲を示す一覧図
- 直近の組合会計決算書
- 労働協約
資格審査で不適合を受けた場合の対応方法
資格審査の不適合との決定に不服の場合には、その決定を受けた労働組合は、その決定書の写しの交付を受けた日から15日以内に中央労働委員会に再審査の申し立てを、6カ月以内に裁判所に行政訴訟をそれぞれ提起できます。
島根県で、労働組合の設立をご検討の方は行政書士にご相談ください
労働組合の資格審査は、労働組合法による保護を受けるための審査です。審査を経て適格と認められた労働組合は、使用者による不当労働行為に対して救済を申し立てたり、都道府県労働委員会の労働者委員を推薦したりすることが可能になります。
労働組合の資格審査については、行政書士にお任せいただけます。島根県で、労働組合の設立をご検討の方は、当事務所にご相談ください。